公正証書と合意書の違い
今回お届けするのは、前回に引き続き「公正証書」に関する相談です。
このブログを読んでくださる依頼者の中には、相手方と金銭のやり取りをすることの多い経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな皆様にお役にたてるコンテンツになっておりますので、ぜひご一読頂けますと幸いです。
今回の記事は、公正証書と合意書の違いについて紹介します。
ー 今回のご相談内容 ー
なかなか売掛金を払ってくれない取引先と分割払いの約束をすることができました。
これを文書にしようと思うのですが、ただの合意書と公正証書では、どちらを作成した方がよいのでしょうか?
「教えて!高島先生!」
当事務所代表弁護士高島秀行がお答えします。
まず、合意ができたら、合意書を交わし、相手方の署名捺印をもらうのが基本です。
日本では、口頭での合意はいわゆる口約束で、守らなくても仕方がないと思われている節があります。
また、実際、訴訟になっても、口約束だと「言った。」「言わない。」という問題となり、立証できないということにもなってしまいます。
そこで、合意ができたら、きちんと書面にしようというあなたの考えは正解です。
さて、それでは、一歩進んで、合意書を作成するには、一般の合意書でよいのでしょうか。公正証書がよいのでしょうか。
公正証書を作成するには、印鑑証明書や実印が必要で、しかも、公証人という公務員が、内容及び作成当事者を確認するのですから、合意の証拠として、公正証書の方が上かもしれません。
しかし、一般の合意書でも、印鑑証明書を添付してもらい、実印を押してもらえば、合意の証拠という意味では、公正証書と同じくらいの価値を持ちます。
一般の合意書が公正証書に全く及ばない点が1つあります。
それは、金銭の支払いについて、公正証書を作成しておき、その中に、払わない場合は強制執行することを認めるという条項(強制執行認諾条項)を入れておくと、公正証書で、差押えなどの強制執行ができるということです。
一般の合意書に、払わないときには強制執行をすることを認めるという強制執行認諾条項を入れても、裁判をして判決を取って、判決によらなければ強制執行をすることができません。
しかし、強制執行認諾条項付の公正証書にしておけば、相手が約束どおり払わない場合に、裁判をしなくても、いきなり財産を差し押さえることができるのです。
即ち、分割払いなどの支払い約束を公正証書とすれば、裁判費用、裁判の労力、裁判をしている時間が節約できるのです。
ただ、公正証書を作成するには、若干の作成費用がかかりますし、相手と自分とで、公証役場に出頭しなければなりません。実印と印鑑証明書(会社なら登記簿謄本も)なども
用意する必要があります。
だから、相手の気が変わりそうなときには、取り合えず、一般の合意書を作成して、その後公正証書を作成するのがよいでしょう。
最初の合意書の中に、1回でも支払いを怠ったら残額全部を支払うという条項、合意書と同じ内容の公正証書を作成するという条項を入れておくことが大切です。
高島法律事務所では、公正証書の分野において多数の解決事例をもっています。
まずは、「相談」という形で、第一歩を踏み出し、公正証書作成のお手伝いをさせてください。経営者である依頼者の力になれるよう邁進いたします。