協議事項 ―契約書に協議条項を入れておけば安心か?―
今回お届けするのは、前回に引き続き「契約書」に関する相談です。
このブログを読んでくださる依頼者の中には、トラブルが起こった際、契約書作成の経験が多くあるという経営者の方もいるのではないでしょうか。そんな皆様にお役にたてるコンテンツになっておりますので、ぜひご一読頂けますと幸いです。
今回の記事は、協議事項について紹介します。
ー 今回のご相談内容 ー
私は、契約書を作成するときには、もしものときのために、「本契約に定めている内容で紛争が生じたときは協議し解決する」という条項を入れています。
どうでしょうか。
「教えて!高島先生!」
当事務所代表弁護士高島秀行がお答えします。
私は弁護士ですから、よく契約についての相談も受けます。
契約を交わすこともしない会社が多い中で契約を交わしている会社はそれなりにきちんとしていると思います。
ただ、その中で、意外に多いのは、「本契約に定めていない事項についてはその都度話し合いで解決する」「本契約に定めている事項について紛争が生じた場合は、その都度話し合いで解決する」という条項を入れてあるということです。
そして、会社の経営者の方は、私に対し「先生、この条項があれば大丈夫でしょ。」というのです。
しかし、よく考えてみてください。契約は、何のために結ぶのでしょうか?
まず、契約書は、お互いに話し合った内容の証拠となります。
それから、もう一つには、お互いが後に契約で揉めたときの解決の基準となります。
例えば、パソコンを作って納入する契約を結んでいた場合に、途中まで作ったところで、地震が来て壊れてしまったというような事案の場合、途中まで作った費用はどちらが負担するのか、これから納入業者は再度作らなければならないのか、発注業者がそのせいで買主に売却できず被った損害は誰が負担するのかなど、様々な問題が出てきてしまいます。
これらについて、話し合いで解決すると契約で定めてあるから話し合いましょうと言ったところで、ひとたび事故が生じてしまい、お互いがお互いに有利な主張をしていた場合には話し合いでは解決できません。
要するに、契約書で、「紛争が生じたときは話し合いで解決する」と定めてあっても、解決方法が契約書に定められていないのですから、話し合いで解決しようもないのです。
したがって、「契約に書かれていないことは協議する」「契約で紛争が生じた場合は協議する」などと書かれていても、実際上、紛争が生じた場合には、意味がないこととなります。
もしも、「この協議する」という規定が万能なのであれば、契約書には、「すべて協議する」と書いておけばよいことにもなってしまいます。
日本は、アメリカとは違って、法律で万が一の場合を定めているケースが多いので、契約で定めていない事項は法律による解決をすることができます。
ただ、契約は、当事者が納得すれば、法律とは異なり自社に有利な内容にすることもできるのです。
お互いの関係が良好な契約締結時に、なるべく多くの事項についてどうするか決めておくことは大切です。
契約で予め定めてあっても、紛争が生じたときに、話し合いで契約内容と異なる解決を決めることももちろんできます。
理想をいえば、契約では自社に有利に作っておいて、トラブルの時には、相手に譲ってあげるというのがよいのではないでしょうか?
高島法律事務所では、契約書の作成の分野において多数の解決事例をもっています。
まずは、「相談」という形で、第一歩を踏み出し、公正証書作成のお手伝いをさせてください。経営者である依頼者の力になれるよう邁進いたします。