実印は何のために使うのか?
今回お届けするのは、「契約書に押印する実印」に関する相談です。
このブログを読んでくださる依頼者の中には、契約書の締結のルールに関心の高い経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな皆様にお役にたてるコンテンツになっておりますので、ぜひご一読頂けますと幸いです。
今回の記事は、契約書に押印する実印に関する注意をご紹介します。
ー 今回のご相談内容 ー
弁護士さんが、取引する際には契約書を交わした方がよいと言うので、契約書を作成することにしましたが、会社の契約書には、実印を押す必要がありますか?
「教えて!高島先生!」
当事務所代表弁護士高島秀行がお答えします。
契約書に限らず、日本は印鑑社会ですから、書類に印鑑を押すことが多いです。
しかし、どの書類には、どの印鑑を押せばいいのか、明確に意識している人は少ないようです。
会社には、大きく分けて、法務局に届けている実印、銀行取引に利用している銀行印、その他の印鑑の3種類の印鑑があります。
契約書には、どれを押せばよいかというと、どれでもかまいません。
そもそも、契約自由の原則というのがあって、法律上、契約は、どのような内容の契約でも、どのような形式の契約でも有効なのです。
だから、契約書がない口約束でも契約としては有効なのです。口約束でも有効な契約ですから、契約書の印鑑も法律上はどれでもよいということになります。
しかし、契約の相手方に印鑑を押してもらう場合は、なるべくなら実印を押してもらいましょう。印鑑を押してもらっていても、後で訴訟になったときに、相手方がそのような印鑑は持っていない、あるいは無断で使用されたなどと主張してくることがあります。
実印でない普通の印鑑の場合、相手にそのような印鑑を持っていないと言われた場合、持っていると証明することは難しいです。
ところが、実印であれば、印鑑証明と比べればその会社の印鑑であることはすぐに証明できますから、そのような印鑑を持っていないという主張はできません。
そして、民事訴訟法上、その会社の持っている印鑑で押された印影は、その会社が自分の意思で押したと推定されることになります。
だから、誰かが勝手に押したと相手方が主張する場合には、誰がどのように印鑑を無断で持ち出して印鑑を押したのか、相手方が立証する必要が出てくるのです。
それに、実印は、その他の印鑑よりも重要で、誰でも持ち出せるところには保管しないのが普通ですから、相手が無断で誰かが持ち出したと立証することも難しいわけです。
そのようなことから、相手方に契約書に印鑑を押してもらう場合には、なるべくなら印鑑証明書をつけて実印を押してもらう方がいいでしょう。
ただ、金額の小さい取引や継続的に何度も取引している相手に、実印を押してくれと言ったら、面倒だから取引を止めると言われかねません。
金額が一定額以上の取引の契約書、初めての取引先との契約書、イレギュラーな取引の契約書、トラブルを解決する場合の合意書など、重要と思われる契約書に実印を押してもらうようにしたらよいと思います。
高島法律事務所では、印鑑に関わる紛争において多数の解決事例をもっています。
まずは、「相談」という形で、第一歩を踏み出し、あなたと紛争解決・悩み解消のお手伝いをさせてください。経営者である依頼者の力になれるよう邁進いたします。