電子書籍は安売りが可能か。
前回、本の安売りを見かけない理由についてお話ししました。
通常の商品では、メーカーが卸業者や小売店に定価で売るように指定できないけれども、本などの著作物は、例外的に、メーカー(出版社)が本屋に定価で販売するよう指定することが認められているということがその理由でした。このことを「再販売価格維持」と言いました。
さて、日本でも電子書籍が普及してきており、アマゾンが日本でも電子書籍を販売すると言われています。そこで、問題となっているのは、この電子書籍の販売価格です。
現在、本(書籍)は本屋で定価で売られています。とすれば、電子書籍も中身は本屋で売れられている本(書籍)と同じなのだから、定価で販売できるように思えます。
しかし、独占禁止法の元締めである公正取引委員会はホームページで、そもそも著作物の再販売価格維持を例外的に認められている理由は、
昭和28年当時の定価販売の慣行を追認したものであること。(だから、あまり例外を認める理由に合理性がないと言いたいのかもしれません。)
また、独占禁止法上は再販売価格維持を例外的に認める対象は「物」であることから、「物」でなく「情報」である電子書籍には再販売価格維持の例外の適用がないと明言しています。
従って、出版社が電子書籍を販売しているサイト経営会社に対し、販売価格を拘束している場合には公正取引委員会は、独占禁止法違反で摘発する可能性があります。
一説には、アマゾンが日本の書籍の電子書籍を販売する契約を各出版社と結んでいますが、その際、出版社はアマゾンに電子書籍の販売を認める代わりに、電子書籍の販売価格の決定権を出版社に留保する契約を結んでいるとも伝えられています。
もし、これが本当であれば、公正取引委員会は出版社を独占禁止法違反で摘発するということになります。
しかし、日本の出版社は、アマゾンやその他の電子書籍出版サイトが電子書籍を安売りするなら電子書籍の販売を認めないでしょうから、みなさんは、電子書籍で有名な作家の作品を読めないということにもなりかねません。
今後、電子書籍の出版はどうなることでしょうか。注目です。