財産開示制度(平成16年4月1日施行)の解説! 裁判勝訴にも関わらず、売掛金回収に悩む経営者の皆様へ
今回お届けするのは、前回に引き続き、「債権回収」「売掛金回収」に関する相談です。
(→前回の記事「売掛金の回収方法(債権保全策)―仮処分―」)
(→前々回の記事「少額訴訟制度を解説!弁護士に依頼したら赤字になるのでは!?と悩む経営者の皆様へ」)
(→前前前回の記事「売掛金回収の強い味方!内容証明郵便よりも強力な制度を紹介します!」)
このブログを読んでくださる依頼者には、売掛金の回収でお悩みになっている経営者の皆様も多いのではないでしょうか。そんな皆様にお役にたてるコンテンツになっておりますので、ぜひご一読頂けますと幸いです。
今回は、「財産開示制度(平成16年4月1日施行)の解説! 裁判勝訴にも関わらず、売掛金回収に悩む経営者の皆様へ」というテーマでお届けさせていただきます。
ー 今回のご相談内容(前回と同様)ー
私はIT企業を経営しています。お客様にWebサイトや社内システムを納品する仕事です。そんな中、あるクライアント様が納品したにも関わらず、代金を支払いません。取引先が、商品の代金を「払う。払う。」と言いながらなかなか支払ってくれません。
売掛金について、裁判をして勝ったのですが、相手が支払ってくれません。
相手の財産に強制執行をしたいのですが、何か調べる方法はないでしょうか。
「教えて!高島先生!」
当事務所代表弁護士高島秀行がお答えします。
売掛金(代金)の回収では、いつ、いくら支払うという約束をしているか(証拠書類があるか)ということも、大切ですが、相手方に財産があるかということも大切です。
日本の法律では、代金を支払わなくても、刑罰が科されることはありません。
代金を支払わない場合は、
①延滞金が発生する ②財産を差し押さえられる
というペナルティがあるだけです。
まともなビジネスをしている人は、延滞金が発生し、支払額を大きくなったり、財産を差し押さえられたりするというのは大きなペナルティです。
しかし、延滞金が嵩んだとしても、差押えがなされないのであれば、結局、お金は取られないので、払わない人にとってペナルティにはならないのです。
そこで、売掛金の回収をするには、差押えの対象となる相手方の財産を調査することが重要となってきます。
一番良いのは、取引を開始する際に、相手の財産・収入源を調査しておくことですが、なかなかされていないようです。
結局、判決を取ってから調査することとなります。
これまでは、債務者のプライバシーの問題もあり、相手方の財産を調査する法的制度はありませんでした。
そこで、信用調査会社や探偵を利用して、調査するほかありませんでした。
ただ、費用対効果を考えると、よほど多額の売掛金でないと合いませんでした。
だから、債務者の財産や収入源がはっきりしない場合には、諦めるしかなかったのです。
それでは、支払わない方が得になってしまい、平成16年4月1日から債務者の財産・収入を法的に調査する財産開示制度ができました。
これは、強制執行する財産が見当たらない、あるいは、差押えをしてみたけれども、回収ができなかった場合に、裁判所で、債務者の財産を調査する制度です。
売掛金についての判決、あるいは公正証書を持っている債権者の申立により、裁判所が債務者に財産状況及び収入源を聴取します。
債権者も裁判所に行って、債務者に質問をすることができます。
債務者が、財産があるにもかかわらず、嘘を言って隠した場合には、30万円以下の科料が科せられます。
これまで、相手がどこの取引先に売掛金を持っているかはなかなか調べることができませんでしたが、今後はこの財産開示制度を利用することによって、調査し、差し押さえることが可能になりました。
この財産開示制度によっても、債務者に何の収入も財産もない場合には、売掛金の回収は不可能となるので、取引開始時に相手の支払能力のリスクをよく検討することが必要なことは変わりません。
高島法律事務所では、売掛金・債権回収の分野において多数の解決事例をもっています。
また、代表の高島秀行は、債権回収会社で取締役を務めています。売掛金が回収できない状態が続くことはとても悩ましいですよね。
まずは、「相談」という形で、第一歩を踏み出し、解決までのお手伝いをさせてください。経営者である依頼者が、本業にいち早く集中できるよう共に解決に邁進いたします。