共同経営していたが取締役辞任を迫られた

今回お届けするのは、前回に引き続き「共同経営」に関する相談です。
 
このブログを読んでくださる依頼者の中には、経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな皆様にお役にたてるコンテンツになっておりますので、ぜひご一読頂けますと幸いです。
 
今回の記事は、今まさに、共同で経営に当たっている方及び共同経営で会社を始めようとしている方に特に読んでいただきたい記事となっております。
 

ー 今回のご相談内容 ー

3人で、持ち株3分の1ずつで、会社を設立して事業を営んできましたが、先日他の2人に任期満了をもって取締役を辞めて欲しいと言われました。
 
役員としての退職金と、株式の買取を請求したいのですが、このような請求は通るでしょうか?

 

「教えて!高島先生!」

当事務所代表弁護士高島秀行がお答えします。


共同で会社を設立して、事業を始めるときには、事業自体が軌道に乗るかどうかもわかりませんから、将来、会社の経営権を巡って争いが起きるなんて事まで思いを馳せることは少ないと思います。
 
経験上、株式の持分は平等にしている会社が多く、これが2人の場合には、どちらも2分の1ずつとなりますから、お互い相手を強制的に辞めさせることはできません。
 
しかし、質問のように、3人の場合、他の2人が手を組むことによって、株主総会の議決権の過半数を押さえることとなります
 
そこで、取締役の任期が来たときに、1人だけ株主総会で取締役に再任しなければ、実際上は、会社の経営から退かなければいけないことになります。
 
今回の相談者の方は、このようなことをされた場合に、対抗手段があるかというご質問ですが、初めに何も決めていないと、対抗手段はありません
 
まず、取締役の退職金(「退職慰労金」とも言います)は、株主総会で決めなければなりません。
 
したがって、相手2人が、株主総会で退職金について議決しなければ、退職金を請求することはできないのです。
 
また、株式についても、会社や相手が「うん」と言わなければ、会社や相手方に、強制的に株式の買取を請求をすることはできないのです。
 
法律上、持ち株は、第三者に売却することはできます。ただし、証券取引所に上場もしていない中小企業の過半数に満たない株式を買おうとする人はいません。
 
このように、株式を過半数持たない場合は、無償で会社経営から排除されてしまう恐れがあります。
 
これに備えて、最初に、
①取締役の任期を長めに定めて、取締役を辞めた場合には退職金を支払うこととする、
②取締役を辞めるときには、共同経営者が株を一定の金額で買い取ることとする、
などと定めておくのがいいです。
 
なお、本件は任期満了のケースですが、任期途中で株主総会で解任された場合は、解任自体は争えませんが、解任に正当な理由がなければ任期の残期間分の取締役の報酬を請求することが可能となります
 
共同事業を始めるときには、まさか、仲間割れが起きるとは考えないのが普通ですが、実際は、会社が軌道に乗り始めると、メンバーの意見が違ってきて、別れることになるケースは意外に多いです。

 


高島法律事務所では、共同創業・共同経営・共同出資に関わる紛争において多数の解決事例をもっています。

 

まずは、「相談」という形で、第一歩を踏み出し、あなたと紛争解決・悩み解消のお手伝いをさせてください。経営者である依頼者の力になれるよう邁進いたします。


 

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